Smiley face
写真・図版
ヒナメラ・モーガント・クロスさんと息子たち=本人提供

 米国のトランプ政権がウクライナ戦争の停戦交渉でロシア寄りの姿勢を見せ、フランスのマクロン大統領は今月、自国の核抑止力を欧州全体に広げるための協議を始めると表明した。欧州で米国の「核の傘」への信頼が揺らいだためだが、折しも米国では核兵器禁止条約の締約国会議が開催中で、その場にはフランスがかつて核実験を繰り返した仏領ポリネシアから来た人もいた。

 ヒナメラ・モーガント・クロスさん(36)は30歳になる頃、何げなく新聞を開いて衝撃を受けた。自分が生まれ育った仏領ポリネシアで、フランスが1966~96年に核実験を193回繰り返したと知った。50回近くは大気圏内での実験だった。「私は大学で法律を専攻した。学位も持っている。それでも自国で起きたことについてこんなに無知だった」

 フランスが最後に核実験をした96年当時7歳だった。健診で異常が見つかり、24歳で慢性白血病と診断された。祖母は甲状腺がん、伯母は甲状腺がんと乳がんを患っていた。母と姉も甲状腺に異常が出た。でも、がんになりやすい家系なのだと捉え、過去の核実験についても詳しいことは何も知らなかった。

「核実験との闘い、過去ではない」

 広島・長崎で多くの被爆者が…

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